tiktokをはじめとするSNSやYouTubeを見ていると、英語学習に関するさまざまなアドバイスを目にします。ほとんどは良いコンテンツを配信していると思えます。しかし、その中には、「この表現はネイティブに失礼だから使わないで」とか「実は間違っている」といった、強い言葉で注意を促すコンテンツも少なくありません。
時には、全く間違ったことを伝えている動画も実際にあります。
一例を挙げますね。
「Of course」という定番表現について、「『そんなの当たり前じゃないか』と上から目線に聞こえるから『Sure』を使いましょう」という解説を見かけたことはないでしょうか。
しかし、日常会話で「Of course」は、相手の言葉に快く同意したり、頼みごとを気持ちよく引き受けたりするときの必須フレーズです。なぜこれが「失礼」と言われてしまうのか、疑問に感じた方も多いはずです。
また、「Why did you come to Japan?」は「どうしてきたの?」みたいにぶっきらぼうとか失礼になるから使わないで、と言っている英語インフルエンサーも多くいます。
これも普通に尋ねれば、全く問題なく、失礼にもなりません。
今回は、こうしたSNSの英語情報に潜む罠と、私たちが本当に意識すべきコミュニケーションの本質について考えていきます。
1.「Of course」「Why did you come to Japan?」は本当に失礼な表現なのか?
結論から言うと、「Of course」は日常会話にごく自然に溶り込む、非常にポジティブで便利な表現です。
ネイティブスピーカーも、以下のような場面で日常的に使っています。
- 快い承諾: “Can you help me?” — “Of course!”(もちろん!)
- 当然の同意: “It was a great movie.” — “Of course it was.”(そうだよね、本当に!)
では、なぜ一部のインフルエンサーは「上から目線に聞こえる」と主張するのでしょうか。それは、「言われなくても分かっているよ」というニュアンスが強く出てしまう文脈や言い方が存在するためです。
「Why did you come to Japan?」も全く問題なく使えますし、失礼な表現ではないです。
「What brought you to Japan?」だって、しかめっ面しながら、上から目線で言えば、本当に失礼だし、相手は怒るかもしれません。
これは「Of course」「Why did you come to Japan?」という表現自体の問題ではありません。
2. 言葉の意味を決めるのは「トーン」と「文脈」
日本語でも、「もちろん!いいよ」という言葉を冷たい声のトーンや呆れた表情で言えば、相手を突き放したような印象を与えてしまいます。英語もまったく同じです。
言葉の意味やニュアンスは、単語単体で決まるものではありません。以下の要素によって180度変わります。
- 声のトーンやイントネーション
- 表情やボディランゲージ
- 前後の文脈や関係性
例えば、定番の感謝を表す “Thank you.” であっても、無表情で冷たく言い放てば、皮肉や不快感として受け取られてしまうでしょう。どんなに素晴らしい単語を選んでも、使い方や文脈を無視して「これを使えば正解」というものはありません。
一つの日本語を採ってみても、日本人同士で異なった意見や考え方を持つ人はたくさんいます。それはその人の独自の意見である場合もあるのです。
3. なぜSNSでは「極端な英語情報」が多いのか?
SNSやyoutube動画の性質上、閲覧数を増やすために、どうしても目を引くキャッチコピーや、常識をひっくり返すような強い主張が好まれる傾向にあります。
「実はあなたが使っているその英語はNGです」「ネイティブは誰も使っていません」といったタイトルを見た時に多くの人は、その内容が気になるでしょう。学習者の「恥をかきたくない」「正しい英語を話したい」という不安を掻きたてるために、インフルエンサーは、これらのタイトルを強調することによって、再生数やコメントが集まりやすくなることを知っています。
これは、閲覧数を増やすための常套手法として確立しているため、英語インフルエンサーがこのような手法を用いている、と言えます。
そこを英語インフルエンサーは狙っているのです。
このような英語インフルエンサーは、本当に英語学習者のためにと思って内容を発信しようとは考えていない、と思わざるを得ません。その真の目的は、閲覧数を増やし、収益性を重視することにあります。
その結果、本来は「こういう文脈では少し横柄に聞こえることもある」という細かいニュアンスの注意点を、「この英語は使わないで!」という極端なルールにすり替えてしまうのです。
4. 英語学習で本当に大切なこと
どのような言語であっても、言葉は「生き物」です。教科書通りの正解に縛られたり、ネット上の細かなNG集に怯えたりする必要はありません。
英語は、相手と心を通わせるためのコミュニケーションツールです。細かなテクニックや「ネイティブに嫌われないための神経衰弱」のような学習にとらわれるよりも、次のような姿勢を大切にしたいと思います。
- 相手の目を見て、笑顔や温かいトーンで話すこと
- 自分の気持ちを誠実に伝えようとする姿勢を持つこと
- 情報の波に飲まれず、文脈やその場の雰囲気を大切にすること
英語に関するSNSや動画のコメント欄を見てみると、「こんなこと知らずに使ってました!」とか「貴重な内容をありがとうございます。」のような文面を見るにつけ、この人たちは間違ったことを覚えてしまうのだろうな、と心配してしまいます。
実際に、英語に慣れていない人は、このような間違った内容の動画を信じてしまうことになります。これは英語を勉強している多くの人たちにとって、大きな妨げになっています。
ですので、英語上達の上では、「この英語は失礼だから使わないで!」とか「この言い方間違ってます!」というようなタイトルを付けているコンテンツは、あまり信用しないほうがよいと思います。
多少文法や単語のチョイスがシンプルであっても、思いやりのあるコミュニケーションであれば、あなたの気持ちは必ず英語で相手に伝わります。SNSの極端な情報に振り回されず、自身の感覚を信じて、楽しく英語を学んでいくのが上達の早道です。
